1.なぜ、2重の委託契約が必要なのでしょうか?
なぜ、管理組合は、1)管理会社と契約し、さらに2)マンション管理士と2重契約が必要なのでしょうか?
つぎの3種類の管理組合を想像してください。
(1) マンションの高齢化により理事長が不在となった管理組合
(2) マンションの賃貸化がすすみ、役員のなり手不足の管理組合
(3) 小規模マンション(約40戸以下)のため役員の人材不足の管理組合
この管理組合は、機能低下により、管理会社の思いのままになってしまいます。 理事長や監事は、組合運営を充分に行えず、業務をチェックできない状態となっています。 その結果、修繕工事費などが管理会社の思いのままに決まってしまいます。
具体的に理解するため、修繕工事の発注を考えると、分かりやすくなります。 理事会で工事を依頼した場合、標準規定では管理会社が直接工事を受注できません。 この行為は、標準管理委託契約書第3条「別表第1」で禁止しているためです。 「管理会社以外の業者に行わせる」場合に限定し、管理行為が規定されています。 この規定がないと、工事金額の決定に競争原理が働かず、談合と同じ結果になるからです。
その行為は、利益相反行為といい、法律で規制されています。 「管理会社のフロントマン」は、管理組合の不利益となる行為が、信頼関係上行えない、という法律です。 同様に、管理組合の理事の利益相反行為も、区分所有法第51条により禁止されています。 自己契約・双方代理が、民法第108条により禁止されています。
しかし、上記の民法の例外規定で管理組合の承諾があれば、利益相反とはなりません。 承諾がある場合、不利益を承知の上で契約する、法律行為となるからです。
役員が上記の内容を承諾してよいのか、否か、判断できない場合、どのようにすべきでしょうか? このような不利益は、どのように避けることができるのでしょうか?
「管理組合の立場」に立ち、マンション管理内容を専門的に判断できる者が必要です。 このような状況のために法律で創設された者が「マンション管理士」です。 マンション管理適正化法により創設された「マンション管理士」は、「管理組合の立場」に立つ必要があります。 マンション管理士は、管理組合の立場に立つよう、法律で定められました。 さらに、マンション管理適正化法にはマンション管理士に対する倫理規定の定めがあります。 (1) 信用失墜行為の禁止(40条) (2) 秘密保持義務(42条)
この規定により、マンション管理士に助言・指導を依頼しよう、と思う管理組合が多くなるかも知れません。
重要です! マンション管理士は、管理会社として登録しない限り、管理業務(基幹事務)を行うことができません。 つまり、2重の委託契約は、業として管理業務をすることを登録しない限り、あり得ません。 また、管理業務が業として可能となった場合、「管理組合の立場」で業務を見ることは不可能です。
以上の法制度の改正を前提に、さらに詳細に、利益相反になる行為を説明しました。 下記の①~③で、管理会社のフロントマン(基幹業務担当者)の行為を考えてください。
【管理組合】 ===> ① 【フロントマン】 ② <=== 【管理会社】 ↑ ③ 【マンション管理士】(※ 基幹業務を業として行うことが出来ないマンション管理士)
①②③の説明
① 管理組合は、フロントマンを信頼し、業務を依頼します。 ② 一方、フロントマンは、管理会社の利益を考え仕事をします。 ③ マンション管理士は、管理組合の立場に立つ義務があります。
上図において、フロントマンは、管理会社の社員です。 したがって、一般的に①の不利益が ②の利益となるので、利益相反の関係が成立します。 ①の不利益を防ぐ法律の仕組みが ③マンション管理士の業務です。
なぜ? 管理組合がマンション管理士の立場に気がつかないのでしょうか?
ここでは管理費等の滞納問題を考えました。 次の「悪循環」は、管理会社が滞納者への督促を途中から免れる契約していた場合に生じます。
1)管理組合の役員は、この管理委託契約の内容をよく理解していません。 2)管理会社は、契約しないことを行う必要がありません。 ① 管理会社は、住民と適度な距離をとり、付かず離れずの行為をベストと考えています。 ② 管理会社のフロントマンは、約10個のマンションの管理を担当するため、多忙です。 3)管理会社より管理組合への適切な指導は、上記の理由により、不明確です。 4)役員は、管理会社に全部委託している習慣を急に変えることができません。 5)役員は、知識がないので、何をどのようにしたら良いのか分かりません。 6)毎月1回開かれる理事会では住民間のトラブルなどのため解決する課題が多くあります。 7)任期がすぐに切れてしまいます。 8)引継ぎが十分ではありません。 9)マンション管理士へ相談する余裕さえなくなります。 10)新年度となり、役員が交替します。
その結果、1)に戻り、悪循環が繰り返されます。
上記の状況にある、管理組合がマンション管理士を活用した場合、次の「好循環」に変化します。
マンション管理士へ業務を依頼した場合、次のように改善することが期待できます。
1)管理組合の役員は、マンション管理士の助言により、管理委託契約の内容を理解できます。 2)管理組合への適切な指導が期待できます。 3)役員は、何をどのようにしたら良いのか理解できます。 4)毎月1回開かれる理事会も指導を依頼出来ます。 5)任期中に時間的余裕ができるため、役員のみで行動できるようになります。 6)引継ぎも指導されます。 7)役員が交替しても、好循環が維持できるように理事会の運営方法を指導されます。
※ 上記の1)でマンション管理士は、必要に応じて相談に応じるのみです。
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