マンションの管理規約の変更
マンション管理士事務所 柳澤オフィス |
1.マンションの規約変更の問題
マンションの規約・細則の変更を考えているのでしょうか?
マンションの規約変更には、注意が必要です。 マンションの規約・細則の変更で、次のことが生じることがあるからです。
(1)規約の変更を総会で決議した後、急に訴えられた (2)せっかく規約変更したのに無効と判断された (3)規約・細則がまったく守られていない
なぜ? このようなことが起こるのでしょうか?
主な理由として、次のことが過去の事例でありました。
① 規約が組合員の間に不公平を生じさせ、話し合いがないので、多数の横暴となっている。
② 規約を定める過程に違法行為がある(区分所有法などに対する違法行為)
③ 定められた規約により特別の影響があり、受忍限度を超えている。
実際、上記の内容を裏付ける「判例」があります。
1)賃貸方式の駐車場専用使用権が特定の契約者に与えられ、交替がなく、不公平 浦和地判平成5・11・19 2)議決権が専有部分の床面積の割合だったところ、各住戸につき1個の議決となり、不公平 福岡高判平成4・7・30
3)規約改正の集会招集において「議案の要領」が示されなかった (区分所有法第35条第5項違反) 東京高判平成7・12・18
4)新規約設定のための集会招集で「議案の通知」がなかった (区分所有法第35条第3項違反) 東京地判昭和62・4・10
5)分譲業者が駐車場専用使用権を分譲し、その後、無料だった使用料が有料となった事例 最判平成10・10・30
6)駐車場専用使用権の消滅と、それに伴う専用使用権者への「特別の影響」に関する事例 最判平成10・11・20
7)不在区分所有法に協力金の負担を課す規約変更 最判平成22・1・26
8)ペット飼育を制限・禁止する新規約は有効であるとした事例 東京高判平成6・8・4
重要です! 管理組合で行った規約変更により、訴えられることがあります。 この事実を知った人は、ラッキーです。事前に対策を立てることができるからです。 実際、この事実を知らない場合、規約が原因となる難問を解かなければならないからです。
ところで、 なぜ? 規約・細則を変更するのでしょうか?
多くのマンションで主に次の理由で規約の新設・改訂・廃止が行われています。
(1)新設する理由
1)規約がないため
2)原始規約しかないため
3)連結された2棟以上のマンションなので、団地型管理規約を定めたいため
4)法改正を規約に取り入れるため
5)規約原本がないため
6)多発するトラブルの解決を規約で対応するため
7)繰り返される手続きを規約でルール化するため
8)総会でその都度決議することが大変、規約に定めるため
9)その他
(2)改訂・廃止する理由
1)現在の規約が実情に合わないため
2)不公平感があるため
3)規約を守ることができないため
4)改正された法律などに合っていないため
5)条例などに合っていないため
6)手続きを明確にするため
7)その他
ほとんどの場合、規約変更は、問題なく行われています。 しかし、個々のマンションの特有の条件により、その解決方法を適用できない場合もあります。 変更の理由はさまざまです。 まず最低限、法的制限・要件を満足しなければなりません。 満足しない場合、違法行為となってしまいます。
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2.マンションの規約変更に係る法的制限
まず、規約と主に関連する法律を説明しました。 マンション法といわれる区分所有法は、民法を修正する法律で、民法の「特別法」です。 したがって、区分所有関係が成立する建物では、民法の規定の適用が排除されます。
考えているマンションの規約は、その区分所有法の規約事項や、管理組合の運営などを定めたものです。 規約事項には、①一般的な規約事項と②その他の規約事項があります。
① 一般的な規約事項(区分所有法30条) 建物又は敷地若しくは付属施設の管理又は使用に関する区分所有者相互間の事項
② その他の規約事項 この規約事項は、約35個あり、区分所有法全71条の約半数に達する条文が関係しています。 これは、区分所有法の条文で「規約で別段の定めができる」などと記述されている事項です。
本題に戻り、主な法的制限を示しました。
(1)集会に関連した規定
1)特別決議(区分所有法31条1項)、書面又は電磁的方法による決議(区分所有法45条) 規約の変更は、区分所有者及び議決権の各四分の三以上の多数決議が必要です。 規約でこの定数について別段の定めをすることができません。
これを「強行規定」といいます。
また、集会を開かないで、決議することもできます。 区分所有者全員の書面又は電磁的な方法による合意があったときです。
2)特別の影響を及ぼすときの承諾(区分所有法31条1項) 規約の設定、変更又は廃止が一部の区分所有者の権利に特別の影響を及ぼすべきときは、 その承諾を得なければなりません(強行規定)。
3)招集の通知(区分所有法35条1項) 集会の通知は、各区分所有者に発しなければなりません。その期間は、規約で伸縮できます。
4)議案の要領をも通知(区分所有法35条5項) 規約変更の議決事項は、その議案の要領をも通知しなければなりません(強行規定)。 この定めの趣旨は、総会に直接出席できない組合員に不公平を生じさせないことです。
5)決議事項の制限(区分所有法37条1項) 規約変更は、予め通知した事項についてのみ決議できます。 規約で別段の定めはできません(強行規定)。 この定めの趣旨も、総会に直接出席できない組合員に不公平を生じさせないことです。
(2)民法に関連した規定
1)公序良俗(民法90条) 公の秩序、善良な風俗に反する規約は、無効です(強行規定)。
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3.マンションの規約改訂の実際
マンションの立地条件、居住形態が千差万別のため、規約はマンションごとに違います。 また、住んでいる居住者が異なるため、おなじマンションの規約はありません。 例えば、駅に近い場合と駅から遠い場合、駐車場に関する規約が異なります。 さらに、賃貸化・高齢化したマンションとそうでない場合、役員の選出方法の規約が異なります。 超高層マンションと小規模マンションとでは、理事会の運営の規約が異なります。 実際のマンションの規約変更は、次のように(現行)の規約と(改訂案)とを対比させて行います。
〇〇〇マンション管理規約 │ (現 行) │ (改 訂 案) │ 第6条第2項 │第6条第2項 変更 (変更は青で示します) 本敷地の専用使用権は分譲会社が │(第2項を廃止) (消滅議決により廃止 保有する。 │ │ ━ ━ ━ ━ ━ │第14条第3項 追加 (追加は赤で示します) │敷地の専用使用権を有している者は、総会の決議 │により管理組合に専用使用料を納入しなければなら │ない。 │
上記のように、(現行)と(改訂案)の規約とを対比させます。 変更する定めは、青色で、追加する定めは、赤色で示すと、分かりやすくなります。 また、コメントを( )内部に記入し、さらに分かりやすくします。
実際の規約変更は、多数の横暴とならせないため、組合員の権利へ「特別の影響」が出る場合、 その者の承諾を得、「受忍限度」を超えない範囲で決議されます。
なお、国交省が作成した「マンション標準管理規約」も規約変更に活用できます。 管理組合の役員と住民で十二分に話し合いの後、改訂された新規約は、できれば全戸に配布します。
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4.マンションの細則の変更
(1)細則とその変更
マンションの細則は、主に規約と対応した内容を細かく具体的なルールとして定めたものです。 これまでの説明のように、規約は、建物の管理・使用の基本的な事項をきめます。 規約は、マンションの憲法といわれるように、できるだけ簡明で分かりやすい方がよいからです。 しかし、細則には、具体的で細かい内容をきめます
例えば、ペット飼育を可能とした規約の「ペット飼育細則」には、 1)マンション敷地内で、抱きかかえること 2)大きい鳴き声をさせないことなど
また、「駐車場使用細則」には、 1)1ヶ月の使用料金滞納で警告 2)連続2ヶ月の使用料金滞納で駐車場の契約解除 この定めにより、管理費等の滞納者に支払い督促の効果を期待できます。
しかし、必ずしも規約と対応しない場合もあります。 例えば、「防犯カメラ運用細則」などです。
細則と規約との異なる点は、上記のほかに、細則の変更決議が普通決議でも良いことです。 つまり、細則は、変更・廃止が行いやすく、規約変更と比較し柔軟に決議できます。 なお、細則は、規約と同様に、法律の「強行規定」に反する内容を定めることはできません。
(2)細則の主な内容
1)制限・禁止事項の定め ゴミ出し、専有部分の使用規則、ペット飼育細則、バルコニーの改造禁止など
2)承認・届出事項 専有部分の修繕、住戸での各種教室の開催、敷地の一時的利用など
3)通知事項 組合員の長期不在、住宅の貸与に関する事項など
4)通常の使用細則とは別に定める事項 ① 駐車場、② 集会室、③ 自転車置場などの使用細則 規定する内容が多いため、別冊として定めることが一般的です。
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5.管理規約の改訂業務の依頼費用
規約変更のきっかけは、主に次の場合が多いかも知れません。
(1)管理費等の滞納を防ぐため、理事会の決議のみで訴訟を提起したい。 (2)ペット飼育を認め、問題が出ないように細則をきめたい。 (3)小規模マンションなので、第三者管理にしたい。
このように、問題を解決しやすくするため、規約を変更する場合が多いかも知れません。 また、規約を紛失した、規約を全戸に配布したいなどが規約変更の原因となる場合もあります。 高齢化・賃貸化マンションの場合、理事会の運営がスムーズでないかも知れません。
規約改訂を業としているのは「マンション管理士」です。
当マンション管理士事務所 柳澤オフィスでは、次の業務をサービスしています。
1.現に使用している規約について、条文ごとに精査します。 その後、報告書を作成し、理事会などで報告いたします。
費用の詳細は、「費用」ページを参照願います。
2.現在の管理規約と「標準管理規約」との対照表を作成いたします。 ご依頼があった場合、上記1.に料金を加算いたします。
費用の詳細は、「費用」ページを参照願います。
3.現在の規約を見直し、改訂案を作成します。 改訂案に対する最終の判断は、管理組合でおこなっていただきます。
費用の詳細は、「費用」ページを参照願います。
4.新規に規約を設定し、規約案を作成いたします。 規約案に対する最終の判断は、管理組合でおこなっていただきます。
費用の詳細は、「費用」ページを参照願います。
上記3,4の業務の標準料金は、理事会での説明2回、総会での質疑応答1回を基準としています。 また、ご依頼があった場合、次の業務を追加し、その料金を追加いたします。
(1)細則の見直しまたは新規作成 (2)各種届出用紙の作成 (3)全戸配布用の複数規約冊子の作成 (4)その他、標準業務に含まれない業務内容
ご契約までの流れ (1)まずは、当ホームページの「お問い合せ」ページからご相談願います。無料です。 (2)マンションを訪問し、現在の管理規約や細則及び建物・設備の状況を確認いたします。 改正のポイント等について理事会などで説明いたします。 なお、ここまでは無料です。
(3)理事会の要望をお聞きいたします。 その後、総会での最終決議までを含めた規約改正の進め方を協議し見積書を提出します。 (4)協議合意後に、理事会で決議していただきます。 (5)ご契約 以上がお問い合せからご契約までの簡単な流れです。 ご契約に関しては総会決議が必要となる場合もありますので詳細はご相談ねがいます。
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